「命が何より大切」という大人の理解があれば、こどもたちは安心して9月を迎えられます
1学期を駆け抜けてきたこどもたち
行事の多い1学期、こどもたちは大人が思っている以上に緊張し、気を張り詰めて過ごしてきました。担任やクラス替え、進学。友人関係、定期テスト、授業。そのひとつひとつの場面で、失敗しないように、変に目立たないように――。
あるいは、途中から学校に行かれなくなっていたとしたら、事態はもっと深刻です。「学校に行かないといけない」という気持ちと、どうにも動かない身体との間で、葛藤と焦りに押しつぶされそうになっていたかもしれません。
どちらにしても、大人が思う以上に、こどもたちはしんどい思いで4月から7月を駆け抜けてきました。ようやく肩の荷をおろせる時間――それが夏休みです。
そして9月が近づき、「また、あの頑張りを始めないと」と思ったとき、こどもは強い不安や怖さを覚えることがあります。中には、このまま消えたい、とさえ思うこどももいるでしょう。
実際に、2025年の1年間に自殺した小中高生は538人と、統計のある1980年以降で最も多くなり、月別では2学期が始まる9月が最多でした。それほどまでに、こどもたちが追い詰められるのが、夏休み明け前後のこの時期なのです。
こどもに現れる変化
・どこか悪いのか、仮病か……
こどもの心の問題は、言葉になる前に、身体の症状として現れることがあります。頭痛、吐き気、だるさ、朝起きづらい、食欲がない、便秘や下痢――。もちろん感染症や身体疾患が原因のこともあるので、まずは受診して鑑別することが大切です。思い当たる診断がなければ、こどもの心の声に、より深く耳を傾ける必要があります。
・なんだか、話さなくなったかも……
話をしなくなる、顔を合わせようとしない。そんな変化も見られます。「話しても理解してもらえないかもしれない」「恥ずかしくて、もう学校には行けないと言えない」という予期不安や恥の感情、あるいは「こんな自分が悩んでいるなんて申し訳ない」という自己評価の低さから、素直な気持ちを表に出せずにいることもあります。
・暴走しているように見える……
イライラして八つ当たりする、きょうだいげんかが増える、SNSトラブルに巻き込まれるなど、これまでの様子からは想像できない行動が見られることもあります。自分でも制御がきかなくなるほど、強いストレスで神経が高ぶっていることがあるのです。
そばにいる大人ができること
ひと世代前に子ども時代を終えた大人にとって、現代を生きるこどもなりの過酷さを理解するのは、実はとても難しいことです。だからこそ、理解が及ばないまま「みんな大変なんだから、君も頑張って乗り越えよう」と背中を押し続けることは、危険にもなり得ます。それは「君がだめだから、うまくいかないんだ」というメッセージとしてこどもに届き、さらに追い詰めてしまうことがあるからです。
・安心していられる場所をつくる
まずは、こどもの気持ちをほぐし、「自分は大丈夫」「ここは安心だ」と感じられる雰囲気の場をつくること。何を話しても否定されない、恥ずかしい思いをしない、話したことの秘密が守られる――そんな安全な感じが大切です。それは自宅でも、居場所でも、近所での立ち話でもかまいません。
・気になったら、声をかける
「違っていたらごめんね。いつもと違う感じがして心配でさ。なにかあった?」「いつでも、なにかあったら話してくれるとうれしいよ」――大人の気持ちを主語にして、こちらから声をかけてみてください。
・こどものペースで、よく話を聞く
話し出したら、こどものペースに合わせて、じっくり黙って聞く。「家にいたくない」「学校に行きたくない」「部活をやめたい」「塾には行きたくない」――大人、特に親からすれば「なんで?」と思うようなことも、ぐっとこらえて、まずはこどもの言い分に耳を傾けてみてください。
・生きていることを、まず支える
2学期が1学期のようにうまくスタートできなくても構いません。今は動けずにいるこどもが、また動き出すためのエネルギーを十分にためている時期、人生を動かすエンジンを温めている大切な時間だと捉え、見守ること。それが、こどもなりの人生を、生きていることそのものを支えることにつながります。
つなげる~~一人で抱え込まない
大人が気づき、声をかけ、見守ったとしても、すべてを一人で抱え込む必要はありません。学校関係者、スクールソーシャルワーカー、地域の相談窓口、そして私たちのような伴走型SNS相談など、専門的に対応できる場所につなぐことも、大人の大切な役割です。
「話を聞いても、一人では抱えきれないし、解決も難しい」――そう感じることは、決して少なくありません。むしろ、そのほうが多いかもしれません。「専門家に相談して、すこし任せる」ことは、見捨てることではなく、こどもの命を守るための、責任ある選択です。
気づきとひと言のつみ重ねから希望は生まれる
9月1日クライシスは、学校や行政だけの課題ではありません。家庭で、職場で、地域で、こどもや若者と関わるすべての大人に関係のあるテーマです。だから、
- 身近なこどもの様子に、いつもより少しだけ注意を向けてみる
- 気になったら、「最近どう?」と、ふだんより少し踏み込んで声をかけてみる
- 身近な相談窓口の存在を、こどもにそっと伝えておく
これだけでも、苦しい気持ちで見えない明日におびえているこどもの、救いになることがあります。小さな気づきと、ひと言のつみ重ねが、大切な誰かの命を守ることにつながります。
ご相談がありましたら、当ホームページのお問い合わせからご連絡ください。

